2016年8月16日火曜日

夕宙の下 ( ゆうぞらのした )




                ( プロローグ )

2×××年 火星で生まれた僕たちは 初めて地球に向った
「 お兄ちゃん 海って青いんでしょ 」
「 兄ちゃんも 未だ見た事無いけど すんげ~!でっかいんだってよ 」
「 本当、楽しみだな~ 」「 早く着かないかな~ 」
8歳になる 弟のジムは 未だ見ぬ地球に思いを馳せ はしゃいでいる
12歳になる妹のアンナは本に噛り付いたまま 話に乗ってこようとはしない
僕の名は オサム・トレーサ 地球に着く頃には14歳になる
僕たち兄弟は 火星で生まれたマーズチルドレン
火星のシティから見る地球は 蒼白く輝く 星の1つでしかない
地球の引力圏に近づいた頃であろうか
ゴワーン!
軽い衝撃と共に 船内の照明が薄暗い非常灯に切り替わり
赤いランプが点滅する
「 ママ~ッ、 ママ~ 」
「 ジム、男の子だろ しっかりしろ 」
オサムの声が どうにもジムには届かない様子で
弟のジムは小刻みに身体を震わせながら
座席に顔を埋めたまま ひたすら母を呼ぶのである
「 ジム、大丈夫よっ、大丈夫だから 」
コントロールルームのハッチが開き
パーサーをしている母が駆け寄リ
ジムの背中を撫でながら、ジムをなだめる
「 ママ、何が有ったの? 」
「 メインエンジンを流星雨に直撃されたみたい 」
「 大丈夫なの? 」
「 航行不能になるから、ポッドで脱出する事になるわね 」
「 パパとママは全員が脱出した後で
           脱出する事になるから
                オサム、皆の面倒はお願いね 」
「 さっ、ジムもお兄ちゃん達と一緒に脱出ポッドヘ 」
・ ・ ・
「 皆、識別コードのバイタルバンドはしてる? 」
「 はい 」「 はい 」「 うん 」「 してるよ 」「 は~い 」
「 オサム、脱出ポッドに一緒に乗る
   アリスとステファン、二人ともあなたより1つ歳下だから
             あなたがしっかり皆を引率してあげてね 」
「 さあ、一人ずつ船外スーツを着てちょうだい 」
「 先ずはジム、お兄ちゃんの言う事を良く聞いてね 」チュッ
母はジムにヘルメットを被せ脱出ポッドの座席にジムを座らせ
「 次はアンナねっ ステーションに着いても
               勝手な行動はしないのよっ 」チュッ
「 続いてステファン君 うちのオサムのサポートをお願いね 」
「 アリスちゃんもがんばってね 」
「 オサム、脱出ポッドは自動で近くのステーションに
   向う様に成ってるから 到着したらママ達が来るまで
                  皆の面倒をくれぐれもお願いね 」
チュッ!
「 じゃあハッチを閉めるわよ 」
ウィーン、バシューン
脱出ポッドは母船から切り離され沈黙の宙へと流されてゆく
・ ・ ・
どの程度の時間が過ぎた頃であろうか
突然 ガシャン、 ウィーン
ポッドのハッチが開き やや広い空間が垣間見えた
「 ステーションに着いたのか? 」
アンナが真っ先にハッチに手を掛け辺りを見回すと
「 でも、お兄ちゃん誰も居ないよ 」
「 とりあえず 降りるしかないだろう 」
「 ジム、歩けるか?
   ヘルメットを外しても大丈夫みたいだ 」
「 ここは未だ検疫室かもしれないから
        誰もいないんじゃないかなぁ 」
ステファンが口を開く
「 でも、案内放送が有っても良いはずだけど 」
「 皆、船外服を座席に置いて集まってくれ 」
「 お兄ちゃん、これから如何するの? 」
「 うっ、うん 」
オサムは先頭に立って ドアと思しき前に進み寄ると
ウィーン
静かにドアが開け放たれ 辺りは真っ赤な夕日の色に染まった